+インフォーマルな都市化
急速に都市化する途上国都市では、正規の都市開発プロセスに則らずに形成されるインフォーマル市街地が都市化の原動力になっている。しかし、インフォーマル市街地の多くは未確定な土地権利、脆弱な建築構造、水・トイレ・電気などの都市サービス、学校・病院などの社会的サービスの未整備など多くの問題を抱えている。インフォーマル市街地の居住環境改善に対しては、行政によるトップダウン的な開発や民間投資による一方的な開発アプローチでは住民の生活向上につながらないばかりか、住民間のトラブルを生んだり、排他的・利己的な開発の横行により居住環境の劣悪化やコミュニティの崩壊をもたらしかねないことが世界各地の経験から明らかになっている。
本研究室では、インフォーマルな都市化の実態と原理を明らかにすることで、インフォーマル市街地の改善に対する新たな視点からの提言に向けた理論の構築を目指している。
+アフリカ都市計画
現在、アフリカ大陸は世界でもっとも急速に都市化が進行している地域である。植民地体制下で移入された近代都市計画が機能せず、法的枠組みの外側で市街地が形成されているという事実は、アフリカにおける都市化プロセスが先進国が経験したそれとは全く異なることを意味している。
アフリカ都市はそれぞれに固有の歴史を有し、各時代の都市計画の中で都市空間を変容させ、古い都市に新しい都市を重ねながら発展してきた。アフリカ都市の形成過程を考える上では、①植民地化以前の自生的発展の時代、②植民地下での近代都市計画による発展の時代、③独立後の近代都市計画による発展の時代、という3つの時代区分が可能であろう。この仮説の下、本研究室では、アフリカにおける近代都市計画の受容過程と都市空間の変容をその歴史的重層性に着目しながら明らかにすることを目指している。
+都市空間×土地所有
都市空間は人々が生活や経済活動を共同で営む場である一方、土地という私的所有物の集合体でもある。こうした二面性を有するがゆえ、都市には「公共の利益vs個人の権利」の対立が内在している。都市空間としての公共の利益と、土地に対する個人の権利のバランスをいかにとるかがきわめて重要であり、これが都市計画の根源とも言えよう。
本研究室では、都市空間の変容を個々の土地の動態に着目して分析することで、共同の場としての都市空間の利用と私的所有物としての土地の動態との関係性を明らかにしていく。その上で、豊かな暮らしを可能にする集住のあり方(=都市)を考えていきたい。
+復興デザイン
人口減少社会において、南海トラフ巨大地震という超巨大な広域災害の発生が懸念される。内閣府の想定によれば、死者32万人、被害総額220兆円となっている。豊橋市においても理論上最大想定モデルでは、死者数4,700人、建物の全壊・焼失68,000棟となっている。広域的な被害が出た場合、国の関心や社会のリソースは、豊橋のような地方都市にはあまり向かないかもしれない。
本研究室では、豊橋市を中心とする東三河地域を対象に、南海トラフ巨大地震を念頭におき、地域の課題を解決し、豊かな暮らしを実現しうる、復興のための将来像を検討している。地形、産業、歴史、生活など地域の実態をふまえた空間計画、自治体や地域住民、民間企業が今できる取り組み、それと密接に結びつく産業やコミュニティといった地域の経済・社会的側面を総合的に捉えるとともに、それらを支える法制度や事業手法などへの提案も含めて復興を事前にデザインしていく。
+地域デザイン
高齢社会への対応や環境負荷の低減、産業の育成や地域経済の活性化など輻輳した社会課題を解決するために新たなまちづくり手法が模索されている。まちづくりに関する取り組みはこれまで行政が中心となって推進してきたが、近年は行政や企業、市民、大学など多様な利害関係者がともに取り組む事例が増えている。しかし、こうしたマルチステークホルダーによるまちづくりの実態はきわめて多様であり、地域が参照できるような方法論の一般化や理論化が求められている。
本研究室では、全国各地で展開されているまちづくりの実態を把握し、実践における知見やノウハウを蓄積することで、これからの時代を担う新たなまちづくり手法の開発に向けた知的基盤を構築することを目指す。